デザインの湿度
彼女のデザインへの考え方をご紹介いたします。
モノでも人でも、深く関わるほどそれから受けるリフレクションは自分だけのもので、心に映り込んだ印象は誰かと比べることのできないプライベートなものになる。それだけに、心に残る印象にこそ本質はあるのではないかと思っている。毎日、カタチという実体をつくりながら、相手の心に何を置いてこられるのかと、いつもその先に探している。植物なら瑞々しさ、果物ならかぐわしさ、動物ならしなやかさというような、寸法や重量で測り得ないデリケートな事柄を、モノの内側に入り込んで見つけていくのが私のやり方だ。人とモノとの関係性を客観的に捉えるクールな目線というよりも、ねっとりとした肌感覚を拠り所にしている。丁寧につくられたものが湿度感を伝え、手馴染みの良さが懐かしさを語るように、カタチある物質を介して他人の中に潜り込む。そんなあつかましいことを目論んでいる。