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伝統と革新をつなぐDOMANIのものづくり


 ハンガリーの首都・ブダペストから伸びる真新しい高速道路を南西へ約3時間。クロアチアとの国境に近づくころ、景色は小麦畑から美しいブドウ畑に変わります。日本ではあまり知られていませんが、ハンガリー南部は気候が温暖なためブドウの栽培が盛んで、おいしいワインの産地として有名です。

丘の上に小さな電波塔が見えてくれば、ペーチはすぐそこ。坂を上り、城壁に囲まれた旧市街へ入ります。第二次世界大戦中、奇跡的にロシア軍の攻撃を逃れたというその街は、当時の面影をそのまま残していました。

現在15万人の人々が暮らす、国内で第5の都市・ペーチはハンガリー最古の文化都市のひとつで、その歴史は古代ローマ時代に遡ります。中央広場には、世界遺産に登録された「初期キリスト教徒の墓地」が、街の中心には「ガージ・カーシム・パシャ・モスク」があります。現在カトリック教会として使用されているこの建物は、外観を始め、そこかしこにイスラム文化の名残が見られる珍しい建築物で、中世150年にわたり、オスマン・トルコに支配されていたペーチの歴史を物語っています。

ハンガリー最古の大学、ペーリ大学を始め、美術大学や音楽大学など芸術系の学校も数多くあり、夜になると旧市街は学生たちのにぎわいで活気づきます。夏は「ガージー・カーシム・パシャ・モスク」の前にある広場では、毎週末のようにワインや音楽のフェスティバルが開かれます。ブダペストから少し離れているが、一度は訪れてほしい魅力的な街です。

ハンガリーは、歴史的にさまざまな国の影響を受け、独自の文化を生み出してきました。なかでも、陶磁器は世界のコレクターを魅了する名品が数多くあります。ハンガリーの陶磁器といえば、「ヘレンド」を思い浮かべる人が多いです。ヘレンドに並び名窯として名高いのが、ペーチにある「ジョルナイ」です。


1853年に創業したジョルナイは、虹色の輝きを放つ釉薬「エオシン」や耐凍性に優れたタイルのようなテラコッタ「ピログラニット」を開発し、ウィーンやパリの万博で高い評価を受けたそうです。ジョルナイの陶磁器は、ブダペストのリスト音楽院や国会議事堂、オーストリア・ウィーンのシュテファン大聖堂など、数々の建築に用いられてきました。もちろん、ペーチのさまざまな建物にもジョルナイの技術は用いられ、今でもその美しい姿を見ることができます。なかでも、ペーチに訪れたらぜひ見てほしいのが、セーチェニ広場近くの小さな広場にある「ジョルナイの泉」。

虹色に輝く雄羊の頭が四方向に付いており、それぞれの口から水が流れ出すという独創的な噴水で、眺める角度や光の加減によって色と姿を変え、街のシンボルとしてその存在を主張しています。街を歩いているだけで、この街と陶磁器づくりが密接な関係をもちながら発展してきたことがわかります。

現在でも、いくつかの陶磁器工場が残っているものの、近年、安価な陶磁器や陶磁器に代わるさまざまな素材ができたことで、伝統的な技術を用いてつくり出される芸術性の高い陶磁器は、需要が少なくなっているのが現状です。DOMANIがアントワープのオフィスとペーチの工場を行き来しながらプロダクト製作に取り組むのは、この街で連綿と受け継がれてきた陶磁器づくりの技術や知識を学びながら、デザインへアプローチするためであり、歴史あるものづくりを現代につなぐためでもあります。それが彼らの使命だと考えています。

DOMANIのものづくりにおいて軸となるのは、何といっても素材でしょうか。たとえば「ZINC」は、チタン亜鉛板に特殊な仕上げを施すことで、耐候性を高めると同時に、マットなテクスチュアとダークグレーのシックな色合いにより、モダンな空間に映えるデザイン。このマテリアルの美しさを引き立てるフォルムを追求し、完成までに2年の歳月を要しました。プランターに金属が用いられることがめずらしかった当時、この斬新なデザインは話題を呼び、1998年に発表して以来のロングセラーとなりました。


また、レモンイエローやライムグリーンなど、ビビッドカラーが目を引く「AXEL」は、テラコッタにきめ細やかでマットな釉薬を施すことで、経年劣化を防ぐと同時に、防水性と耐寒性を高めたもの。この釉薬の開発には、実に長い年月を要したのでしょう。DOMANIでは、造形美を追求する一方で、屋外に置かれ、風雨や寒さにさらされるプランターとしての機能と堅牢さが不可欠だと考えています。

そして、粘土づくりは、彼らが力を入れていることのひとつ。驚くことに、ヨーロッパ各地の砕土場に自ら足を運び、それぞれのプランターに合う土を選んでいます。土選びにこれほどの労力をかけるプランターメーカーはほかにないでしょう。工場に運ばれた土は砕かれ、丁寧にふるいにかけ、プランターに合わせてブレンド。水とまぜてよく練り、プレス機でろ過して水分を抜き、粘土ができ上がります。現在、使用する粘土は全11種。デザインや釉薬との相性といった条件に合わせて使用する粘土を変えるという徹底ぶりです。


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