Useful, necessary beauty
Useful, necessary beauty
役立つこと、必要とされること、美しいこと
人と人の交流を生み出す、古びることのないデザイン
私たちの身の回りにあるものや取り巻く環境は、気づかないうちに人生をも変えてしまう力を持っています。
また、私たちの視野を広げ、社会と新しい関わり方ができるよう導いてくれることもあります。
そんなふうに私たちの暮らしや生き方に多大な影響を与えるものは、たいてい一つのアイデアから生まれています。そしてそれらのアイデアは、暮らしにおける基本的なニーズに応え、革新的デザインへと導くものだと言えます。
ここでは真のタイムレスなデザインと、次世代へ受け継がれるべき価値を持つプロダクトについて、
extremisの創始者であり、ヘッドデザイナーであるディルク・ワイナンツ氏に話を伺いました。
extremis was founded when the Gargantua was launched. But where did you get the idea for the design?
- extremisは「ガルガンチュア」の発売とともに設立されま した。このデザインのアイデアは、どのように生まれたのですか。
当時、子どもたちがまだ小さかったので、わが家では友人や親戚 を招いて頻繁にパーティーを開いていました。特に好きだったの は夏の屋外でのバーベキュー。ゲストの人数が毎回変わることもあり、テーブルや椅子の出し入れが不要で、子どもと大人が同じ 視線で話せるフレキシブルな家具がほしいと考えていたのです。そうして誕生した「ガルガンチュア」は、座る人の座高に合わせ てベンチが可動する仕組みとなっています。ベンチをテーブルトップと同じ高さに設定して椅子を周りに並べれば、多くの人が集えるテーブルにもなります。 同時に私たちは、高品質で特殊な手入れがいらないアウトドア家 具も求めていました。結果的に、そうした機能的なニーズをすべて叶えた「ガルガンチュア」は、エクストレミスというブランド をも築き上げました。「ガルガンチュア」は、完璧なアウトドア家具の探求の結果であり、私たちをアウトドア家具ビジネスに導いてくれた存在でもあります。
Is that how the design process goes for all extremis products?
-extremisのプロダクトはすべて、同じようなデザイン プロセスを経て生み出されるのでしょうか。
そうですね。なぜならextremisのものづくりはいつも、暮らしの中で何か欠けているものだったり、満たされていなかったり、まだ正しい方法が導き出されていないものを発見することか ら始まるからです。私たちは決して見た目からデザインを生み出すことはありません。まず問題を見つけることからスタートし、その解決策を探り、最終的にデザインのニーズを満たすための素材を選んでいきます。だからextremisでは「椅子をデザインしよう」と言ってプロダクトの開発が始まることはありませ ん。その代わりに、どうすれば人々が集うことができるかを考えるのです。結果的に美しいプロダクトが出来上がったなら、それは偶然以上の何かとしか言いようがありません。もちろん美しさは、私たちが家具を構成する要素の一つではありますが。
What do you want to achieve with extremis?
- extremisで目指していることは何ですか。
私たちデザイナーは、ガンの治療法を見つけようとしている人ほどの影響力は持っていないし、世界を大きく変えられるとは 思っていません。しかし、人々の生活の質の向上に貢献することはできる。そしてそれが、誰かの幸せにつながると考えています。また環境へのダメージを最小限に抑えることも心掛けています。ものがあふれる現代、デザイナーとして何をすべきか 考えた時、多くの製品を市場に投入することではないと私は確信したのです。もしも新しいプロダクトを作り出す際、既にあるものの課題が改善されていないとしたら、ただの無価値な物体でしかありません。そういう意味では、デザイナーに求められるのは、ほかのプロダクトとの違いを出すセンスを磨くことではないでしょうか。ものづくりは、会社の売上を増やすためや儲けるためだ けでなく、社会に役立つものではなければなりません。extremisでは、そんな高い目標を掲げながらものづくりに向き合っているのです。 私たちはものづくりの過程において、環境に何かしらのネガティブな影響を与えています。だからこそ、その影響力をできる限りポジティブなものにしていかなくてはなりません。そのために、効率的に使える素材やデザイン、そしてアイデアの寿命をしっかりと検討しています。
What role does sustainability play in your work ?
- あなたの仕事において、サスティナビリティをどのように考 えていますか。
サスティナビリティや環境問題というと、リサイクル材の使用や環境ガイドラインを満たすことが何よりも必要だと言われることが多いのではないでしょうか。私にとって一番大切なのは、長い歳月、価値を保ち続けるアイデアを考えることです。 いくらリサイクルできて、エコな素材を使っていても、寿命がたった数年ならサスティナブルなプロダクトと呼ぶことはできないでしょうから。 例えば「ガルガンチュア」を市場に投入したのは1994年ですが、2014年にシンガポールの「The Interlace」のテラスに採用されました。「The Interlace」は2015年の「Best building in the world」に選ばれたコンテンポラリーな集合住宅。発売から20年経っても「ガルガンチュア」はその時代を代表する建築に 調和することが証明されたのです。これこそ、extremisが目指すゴール。つまり、私たちは“未来のクラシック”“未来の定番”を作り出したいのです。そして私たちはこれまで、そのポテンシャルをもったプロダクトを生み出してきたと自負しています。一般的にプロダクトのデザインの寿命が3~5年ということを鑑みると、extremisのプロダクトが商業的に成功したと言えるようになるのは、発売後3~5年経過した後かもしれません。そして、もし何年経っても売れ続けているのならば、それは素晴らしい成果と言えるでしょう。
Where do you see extremis in the history of furniture design?
- 家具デザインの歴史の中で、extremisをどのように位置付けますか。
古代エジプト人や古代ローマ人が使っていた家具、また中世の人々やフランス国王・ルイ15世が愛用していた家具を見ると、家具のデザインがその時代の文化の一部だったということがわかります。いつか誰かが私たちの時代を振り返った時、それらと同じように、extremisの家具が未来の文化を築くために重要な役割を担っていると考えてくれたらうれしいですね。 私たちextremisの歴史を語るとすれば、オリジナルのデザインをアップデートさせるという手法が、ブランドの進化のために不可欠でした。例えば「ガルガンチュア」の誕生から20年経ち、 満を持して開発したのが“息子”の「パンタグリュエル」。“父親”である「ガルガンチュア」との共通点は数 多くありますが、単にリデザインしたものではありません。重きをおいている点がまったく違うのです。また「ガルガンチュア」が発売当時、他の一般的なピクニックベンチと異なって画期的だった点は、ベンチをまたぐ必要がなく、座るのが楽だったこと。後に、このアイデアは他のプロダクトにも展開していきました。
What do you believe has changed most since Extremis was founded in1994? And how has extremis reacted to those changes – changes in society, for example?
- 1994年のextremisの設立以来、最も変わったことは何でしょうか。また、その変化にどのように対応していますか。 例えば社会の変化に対してはどうでしょうか。
20世紀、多くの人にとって、住まいは大きいほどに価値があると考えられてきました。しかし近年、小さな家に豊かに暮らす人が増えてきたように感じています。extremisでは、スペースが限られている都市部に暮らす人たちのために、15年前に「ピクニック」を、直近では「ウイルス」を開発しました。これらの着想は、デザイン誌やインテリア業界のトレンドを見ているだけで は得られません。私たちは、外の世界でどのような変化が起きて いるのかを知るために、常に周りを見渡しています。近年、とても大きな変化が起きていて、人々の暮らしやそれに対する考え方が変わりつつあるようなので、可能な限りこの変化を追っていきたいと考えています。それが私たちにとって、新しいデザインやプロダクトを生み出ためのベースとなるからです。